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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(あ)226号 決定

本籍

三重県多気郡相可町大字河田二四番地 宮城刑務所在監中

無職

西村尊助

明治四五年二月一一日生

右に対する殺人、強盗強姦、加重逃走被告事件について昭和二五年一二月一四日仙台高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告本人の上告趣意及び弁護人田中幾三郎の上告趣意第一点について。

原審の是認した第一審判決の事実認定は、同判決挙示の証拠に照らしこれを肯認するに難くないのである。判示第一の事実によれば被告人は逃走の目的を以て着衣下に忍ばせていた刃渡り二二糎の肉切包丁で被害者である看守片平平太郎の心喬部を一気に突き刺し同部に肝臓及び横隔膜を貫き左肺下葉に達する刺創を負わせたというのであるから、この行為自体だ でも被告人に殺意のあつたことを窺うに十分であり、また所論のような事情があつたとしても判示第二後段の事実を強姦と認定することを妨ぐるものでない。所論はいずれも事実審がその裁量権の範囲内で適法になした事実の認定を非難するに し刑訴四〇五条所定の上告適法の理由に当らない。

同弁護人の上告趣意第二点について。

所論は畢竟事実審の裁量権に属する刑の量定を非難するに帰し上告適法の理由に該当しない。

そして記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条三八六条一項三号、一八一条により主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 澤田竹治郎 裁判官 眞野毅 裁判官 齋藤悠輔)

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